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2006.11.28-29
ワディ・ラム砂漠ツアー(午後と翌朝編)
ヨルダン:ワディ・ラム |
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午後1時、ツアーを再開。午後の見所は2箇所。1箇所目は「大きな橋」と呼ばれているところだ。
昼食を摂ったところから15分程の距離で到着する。途中で「小さな橋」も遠目から見ることができたが「小さな橋」な上に遠くから見たので、あまりインパクトはない。
しかし、この「大きな橋」は本当に大きい。
車は「大きな橋」の裏側に回りこんだ。橋の上には裏側から登れるのだ。ガイドの甥っ子は、今日一番のガイド振りを発揮した。とても登れそうなない岩山も、よく見ると足がかりとなる窪みがある。
裸足のガイドはロングコートの裾をはためかせながら、ついて来いと手招きして、上までの登りやすい経路を教えてくれたのだった。
こ、こんな所登るんすか?→ |
ひえー、細い道をたどる→ |
橋が見えてきた(左下へ) |
岩と岩の隙間を通って→ |
師匠、速過ぎますって。→ |
到着。結構高いぞー! |
とはいえ、裸足で慣れた道をサラサラと登る師匠についていくのは大変だった。3分くらいで上まであがれるのだが、短い時間でかなり上の方まで来てしまうのだった。
師匠は私たちからカメラを預かると、そのままサラサラと下に降りて、下から撮影してくれた。
これでこの橋の大きさがわかるのではないだろうか。
師匠は人間が大きく写るようにズームしてくれたのだが、ズームをなくして写してくれるようにもお願いした。
師匠は下に降りてしまったので、帰りは自力で降りるしかない。地上から3メートルくらいの所が一番難しかったが、その手前までは案外ひょいひょいと降りてくることができた。
今日の最後の見所は、巨大なんだけど可愛い岩。
どういうことかっていうと、下の方だけ細くえぐられて2本の足で立っているように見える岩なのだ。
アニメーションかテレビ番組のキャラクターとしていける感じの岩だ。
誰がここを見所と決めたのか知らないが、私としては「ナーイスなセンス!」と大笑い。いずれ、ここに目鼻のいたずら書きなぞしそうな不心得な旅行者があわられそうな予感。そんなことは絶対にしてもらいたくないのだが。
ワディ・ラムには他にも色々と見所はあるのだろうが、私たちが支払った料金で周るとこれで砂漠ドライブは終了。午後2時にはキャンプ地に到着して、あとは夕日を見るまでゆっくりと休憩することになった。
キャンプ地は岩の陰のくぼ地に作られて強風にさらされない所にあった。右前には、地層が隆起によるものだろう全く垂直になってしまったために、アコーデオンのようになっている岩が見える所だった。
テントの周りは午前中に見たのと同じ赤い砂が広がっていた。
風紋のできた赤い砂原の向こうにぼっこり、ぼっこりと岩が突き出していて、そのずっと向こうにも岩山が煙って見えている。
人影はまったくなく、電線もなく、人の手によるものはこのテントの周囲以外にはどこにも見渡らない。「陸の孤島」とはよく言ったもので、まさに赤い砂が大海原で、近く遠くに島が浮かんで見える孤島にいる気持ちなってくるような場所だった。
しばらく周囲を歩き回ってみたが、朝早かったということもあり、テントの中で仮眠を取ることにした。甥っ子ドライバーは今度はシェフとなって夕食の支度から、私たちへのお茶のサービスと忙しく立ち回ってくれていた。
午後2時半で日の入りまで2時間もあるというのいのに、気温も徐々に下がり、太陽の光線にも赤味が差し、早くも夕方が迫ってきているのを感じる。温かいお茶を飲んでから、風のこないテントの中で仮眠を取った。テントの中には絨毯が敷き詰められていて(その下にはビニールシートが敷いてあった)、真ん中の暖炉を取り囲むようにマットレスが敷いてある。他にもいくつかテントはあるのだが、ここのテントだけが丸い形で雰囲気があった。
ちょっと横になって目を覚ましてみると、夫はテントの外にいるようだった。私も外に出てみた。甥っ子は薪を拾いに車でどこかにでかけてしまって、砂漠の中で視界に入る人間は夫だけになった。
・・・・・・・。
この時、初めて強く感じたのは何も音がしないということだった。私たちは常に音の中に暮らしている。車の音、テレビの音、空調機、話し声。音がない状況として身近な体験としては、音楽室の防音の部屋くらいだろうか。あそことて、かすかに音は響いてくる。
ここでは本当に音がしないのだ。鳥の声や岩を渡る風の音などの自然の音さえもしない。ただただ赤い砂漠が広がっている。
・・・・・・・。
じっと岩の上に座っていると、頭の中の汚れが頭のてっぺんからひゅる〜っと抜けていくような気がして気持ちがよくなる。
こんな静寂は今までの人生で味わったことがなかった。
午後3時半になると、今夜のもう一組のお客さんであるフランス人のご夫婦が到着。奥さんの弟さんがヨルダンのフランス大使館で働いていて、その弟さんがジダン氏に直接コンタクトしてここに宿泊することになったのだそうだ。ジダン氏にはなかなかいいお客様がついているようである。彼らはピッカピカの4WDをレンタカーして、私たちのドライバーをガイドにベドウィン村からやってきた。
軽く挨拶を済ませると、4人の宿泊者はそれぞれ思い思いの夕日観察ポイントに散っていった。夫はテント前、私はテント裏の岩の上。フランス人の奥さんは夫の後ろにあるベンチに陣取り、フランス人の旦那さんはあちこち歩き回っていた。
午後4時。みるみる影が伸びていき、夕日の当たっている岩は真っ赤に染まってきた。
そろそろ日の入りだ。
岩の上からは、暮れゆくワディ・ラムの景色を360度堪能できた。
目を移す度に、岩の色がどんどんと変化していく。岩の上でぐるぐる、ぐるぐると色々な所を見て変わり行く夕方の光景を楽しめるのだ。
全方向型で夕焼けを楽しむというのはなかなかできない体験ではないだろうか。どこか一方に視界を妨げるなにかがあるのが通常だ。
ワディ・ラムの太陽は狂おしいばかりの赤い光を放ちながらぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅーっと山すそに隠れていった。
夕方の大イベントが終了し、4人はテントの中であらためて自己紹介を行った。
外にはまだ青空のなごりが見えるが、テントの中には焚き火がたかれてガス灯も点き夜の仕様になっていた。テントでの宿泊といっても、アウトドアというよりは随分ロマンチックな感覚で、大人の雰囲気。
プロパン併設のスタンドアロンの
ガス灯。どこにでも持ち運べる。 |
中央の暖炉が雰囲気を盛り上げる。
しかもとても暖かい。 |
やがて夕食の支度が始まり、午後6時前になると次々と料理が運ばれ始めた。同時にお客様接待係の真打であるジダン氏が登場。食事を摂りながら、ジダン氏が会話を盛り上げるホスト役になってくれた。(食事については本日の献立「2006年11月28日夜」の写真をクリックしてご覧ください)
出発前に見せてもらった写真では、大勢の若者がテントの外で楽器をならして踊っているような夜の写真もあったが、今宵はメンバーが大人のカップル2組ということ、季節が冬で外は寒いということもあるのだろう、ジダン氏を中心としておしゃべりをたのしむ夜になった。
ジダン氏は現在2度目の奥さんと暮らしている。最初の奥さんはお父さんが決めた人で、結婚するまで顔を見たことがなかったそうだ。新婚初日に顔を見て仰天。何という顔だ。しかし、顔は3日もすると慣れた。問題は浪費癖。これは困った。どんどんお金を使ってしまう人なので、結局お父さんに申し出て半年で離縁させてもらったのそうだ。2番目の奥さんとは円満に暮らしているということだった。自らの経験から、男女が結婚する場合は、よくお付き合いして相手の性格をよくわかってから結婚すべきだという意見を持っている。
イスラム教徒の他の人に話を聞くと、親に結婚相手を決めてもらうことこそイスラム教徒の生きるべき道と考えている人、そんなのはもう古いから先進国のように自由に恋愛すべきだと考えている人の話は聞いたことがあるが、自らの経験と意見として自由恋愛を尊重したいという人は初めてだった。
一方で、ベドウィンという遊牧民生活の歴史から代々学ばれている「足るを知る」という精神は尊重している。先進国では消費、消費が叫ばれて、より新しい物を持っていることが自慢の種となっているようだが、ベドウィンは何が本当の幸せかということを知っているというのだ。これについては先進国側のフランス人と日本人がやや反論。そういう消費を推し進める消費者がいるからこそ、新しい技術が開発され文明となってきている一面も否めないのではないか。現にジダンさんだって携帯電話は重宝しているではないか。
40代、50代と年齢が近いこともあって、今の世の中について、子供を持つことについて、恋愛について、家族についてなど、色々な話題に花が咲き、静かな中にもベドウィン、フランス人、日本人の考え方の交流ができた夜だった。
夜も更けて来て、明日も早いので休もうということになると、周囲に敷いてあったマットレスを2組ずつくっつけて、暖炉の両脇にダブルベッドを作ってくれた。しかも、ベッドの足側となる入り口には余ったマットレスを立てかけて防風用のついたてとしてくれた。暖炉もついているし、これはかなり暖かい。毛布や布団もふんだんに用意されていて、砂漠での夜は寝袋を使わなくとも十分に暖かくぐっすりと眠ることができたのだった。
寝る前に歯を磨こうとトイレに向かうと、空は満点の星。これもこのツアーの醍醐味の一つだ。この夜空をうまく撮影できるカメラが発売されるといいんだけど・・・と思った時、さっきのジダン氏の日本人は何でも新製品を欲しがるという話を思い出してニヤリと笑えてきた。
翌朝6時、朝は昨日の夕日に比べると、しのびやかに優雅にやってきた。
辺りが青い紫色に明るんでくるにつれて、山のすぐ上の方がじわーっと赤い光に包まれてくる。
冷たい夜がゆっくりとゆっくりと明けていくのを外で見ていた。
寒くなってテントに戻ると、ベドウィン風の熱い紅茶と朝食が待っていた。
朝7時に出発。自分達の車で来ているというフランス人夫婦はペトラまで行くので乗せてくれると提案してくれたのだが、迎えのバスを頼んでしまった手前、バスを断るのも面倒だ。せっかくの申し出だがお断りして、ここでお別れすることにした。
ジダン氏がよかった、そして一緒になったコルシカ島のご夫婦もよかった。今回はメンバーにもとても恵まれたツアーだった。
ジダン氏に直接連絡を取りたい場合は・・・
The Bedouin Meditation Camp
Owner : Zidane Al-Zalabieh
Mobile : +962 79 5506417
Telefax : +962 3 2032607
Aquaba-Jordan
P.O. Box 1008
E-mail:zedn_a@yahoo.com, zedan_67@hotmail.com
www.geocities.com/rumwadi
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