夫婦2人で世界一周の旅に出発!現地から海外長期滞在の旅の様子をお伝えします。
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2007.01.06
ハンハリーリに蚊帳を探しに

エジプト:カイロ

 アフリカ行きの準備を進めなければいけない。まずはアフリカのどこで何が体験できるのか、町の安全度は、宿泊場所のあてはあるのか、どのコースを通っていくのか。それを知るためには、まずガイドブックの熟読から。で、そのためにはガイドブックを買わなくちゃいけない。ロンリープラネットはアメリカン大学構内にある書店にあり、本に表示されている金額から15%増しくらいで買える。

 保健所に行って狂犬病と腸チフスの予防注射を受けたり、様々な方面への航空チケットの価格調査も必要だ。

 そして、ヘッドライト、懐中電灯、蚊取り線香、蚊帳が必要だ。

 宿で情報ノートを熟読した結果、ハンハリーリという土産物屋街で蚊帳を売っている店があるというので、ハンハリーリ界隈の観光も含めていってみることにした。

 まずはアタバ広場の南にあるアブディーン宮殿を目指した。ここはかつてエジプト経済を破産させるほど豪奢な生活をした王の宮殿で、代々、王の住まいだったが革命後に大統領府所有になったという建物で、内部見学もできるようだった。

 近づいて行っても観光客の姿は一人もなく、警官が物々しく宮殿の柵の外にも内にも立っていて監視状態だった。宮殿をバックに写真を撮っていたら、「ピピピピー、ここで写真を撮影してはいかーん!」と怒られた。

 え?観光名所じゃないの?

 正面玄関に行ってみたが、警官は「何しに来たんじゃ」という冷たい視線。

 え?観光名所じゃないの?

 というわけで、怒られながら撮影した宮殿の外観だけで終了。

 アブディーン宮殿の左端の通りをまっすぐに進む。方位でいうと東に向かっていることになる。

 やがてズウェーラ門という11世紀に建立された城門が見えてくるはずなんだけどなぁ。

 その前に、イスラーム芸術博物館のある大きな通りが6本入り込んでいるサークルにぶつかった。車の渦に通行人が突っ込んでいく。クラクション、怒号、叫び声、笑い声。うわっ。またカオスを見学してしまった。カイロという町は好むと好まざるとにかかわらず、カオスを目にできる所なのだ。

 こんな道をいったいどうやって信号もなく渡ったらいいのかと、数日間は途方に暮れていたもんだった。しかし、車も人の動きを見ながらゆっくりと動いている。車のドライバーと通行人のアイコンタクトと気合でスススススーっと渡っていけるのだ、これが。こんな大きなサークルでさえ、要領は同じ。ドライバーのクラクションは景気づけのラッパとでも思ったほうがいい。ここでは警告の意味などないのだ。


アエーシ運搬人の兄さん。アエーシはエジプトの
庶民のパンで、もっちりした薄い生地、中が空洞に
なっているので、半分に切って中に野菜や具を
詰めたサンドイッチにするのに便利。
 カオスを抜けると、ひっそりとした普通の町並みが続いた。

 首都カイロと言えども、ロバが荷台に荷物を載せて走っていたりする。田舎では草を載せていた荷台が、ここではシャープの洗濯機だったりするのが、都会といえば都会の風景だが。

 やがて、アエーシ運搬人の兄さんの自転車技に目を奪われていたら、その裏手に門らしき影を見つけた。ズウェーラ門に到着したのだった。


 遠めから見ても大きな建造物だと思っていたが、足元までやってくると見上げる程の門だった。

 しかも周囲の道路の幅が狭い。狭い道から巨大なズウェーラ門をカメラに納めようとしても無理だった。

 これが限界だなぁ。この門をくぐって真っ直ぐに伸びるのがムイッズ通り。

 門をはさんで両脇は美しい染物の布を飾った土産物屋が多く見られた。ここにはテント職人が多く集まっていて、11世紀には軍のテントとしてこの辺りの布が使われていたということだった。

 詰まれた石の家の壁から突如として飾り立てられた木製の飾り窓が出ている家も何軒かある。ヨルダンなどでも目にしたこの飾り窓の形は、裕福な商家に作られたものだと聞いている。テント職人として成功した商家である証なのだろう。

 と思って見ていたら、エジプト老人に袖をひっぱられた。英語の達者な老人は、飾り窓のある家の主人だそうだ。

 昔からテントの布を作り続けていた一家で、今は土産物としてこうした布を売りながら、伝統を守っていきたいのだと語っていた。「じゃぁ、家の中を案内しましょうか」と客引きモードになってきた所で、先があるのでとお断りしてムイッズ通りを進んでいくことにした。同じ客引きにしても、ルクソールやアスワンのようなヤクザな雰囲気ではなく、紳士的なアプローチだったのが育ちの良さを感じさせる。

 左手には、ガーマ・ムアイヤド・イッシェイフの入り口が目立っている。

 1415年に建てられたこのガーマは以前は牢獄だったのだが、ここに投獄されていたスルタン・ムアイヤドが即位した後にガーマを建てたのだそうだ。もっとも処刑場だけは残り、その後も処刑が行われてズウェーラ門に首がつるされたこともあったそうだ。

 曇天の下のこの界隈では、建物は風化し、砂漠から吹く砂が全てを覆い、かつての生々しい歴史を直接感じ取る気配はもう残っていなかった。

 ここから先は、突然にして女性用衣料品店が多くなる。

 もう、ハンハリーリに入ってしまったのかとも思ったが、扱っているアイテム、品質、デザインを見ると、これらが決して観光客向けに作られたのではないことがわかる。

 そうそう、私はブラジャーが欲しくてずっと探していたのだった。ブラジャーも山積みになって売っている。プレーンなものの値段を聞いたら、一つEGP10(約200円)だという。もちろん試着などできないので、当てずっぽうに一つ買ってみた。洗濯機で洗濯するとワイヤーが飛び出てきたり、肩紐と本体が引きちぎれそうになったりしてしまうが、今の所使えている。安いなぁ。

 ムイッズ通りが終わって、とても大きな道路に出た。ここの歩道橋を渡ったら、そこからがハンハリーリだ。蚊帳を売っている店は2軒ある。一つは歩道橋を渡った、歩道橋の足元にある布を扱っている4階建ての店。この店では1種類の蚊帳しかなく、天井から吊るす部分にはボール紙で作った輪っかが付いてしまっている。これじゃぁ旅行者としては持ち運びに不便なので却下。

 歩道橋の左手からハンハリーリのメインロードに入る。ハンハリーリはこのメインロードと十字に交差するもう一つのメインロードがあり、これら2本の道を中心に、細い横道が網の目のように走って土産物屋が並んでいた。

 メインロードは幅も広く、置いてある商品も先ほどのローカル向けとは違った品揃え。道に突き出た飾り窓も新しく作られた物もあり、金銀の宝石店もあり、楽しいショッピング街の趣たっぷり。観光客の数も非常に多かった。

 歩道橋から入ったメインロードがもう一つのメインロードと交差する所で右に曲がって歩いて行くと、ハンハリーリの終点にフセイン広場があり、広場に面してガーマ・フセインがある。

 広場はハンハリーリ観光の出発点になっているらしかった。ガイドの旗のもとに集まった各国の団体観光客が、何時に戻ればいいのか、スリをどう防衛するのかなどの注意事項に耳を傾けて、いかにも観光地という感じだった。

 そういえば。カイロに入って2週間近く経過していたが、観光地らしい観光地に来たのは初めてだった。おおおー、観光客がいっぱいいる。とたんに楽しい気分が盛り上がってきた。「旅行者みたいだねー、観光っぽくていいねー」とウキウキしながらハンハリーリを歩いていた。

 荷物が多いので、どこに行っても土産物を買うことはできない私たちにとってハンハリーリなんて関係ない所だと思っていた。しかし、蚊帳を探して図らずも足を踏み入れてしまったハンハリーリは、なかなか魅力的な所だった。いつも徘徊しているダウンタウンの店では見たことがないような、外国人観光客向けの素敵なスカーフがどっさりと目に入る。ううう、欲しい。欲しくなってきた。

 「そういえばカイロに来てから首元が寒いのよねー」と言い訳しながら、一枚スカーフを購入することにした。メインロードの店は高そうなので、裏道に面したあまり客のいないような店で物色する。なーに、置いてある商品にあまり違いはないのだ。

 気に入った一枚を選ぶと、値段の交渉。

 さっきのブラジャーがEGP10だったのを参考にして、この品質だったらEGP10(約200円)だったら買ってもいいと思った。

 主人はEGP20と言う。ほー、EGP20が最初の言い値かぁ。なかなか正直な店らしい。でもEGP10じゃないと買わないもんねー。主人はこの言い値に自信があるらしく、絶対に下げようとしなかった。これよりも品質の悪い商品を引き合いに出しながら、これが綿の中でも上質であること、織がいいことなど熱心に商品を説明している。ふんふんと聞いたけれど、「私の予算はEGP10なので、残念ですが買えません」と店を後にして歩き出した。

 20mも進んだだろうか。先ほどの主人が息を切らせながら「じゅ、じゅうでいいですから、EGP10で売りますから」と追いかけてくるではないか。それならと店に戻って交渉が成立。

 「ハンハリーリでは店の言い値の4分の1が正しい値段だとガイドに言われた」とハンハリーリですれ違った白人夫婦と立ち話をしていたら、そんな話になった。でも、それはあくまでも目安。何か目的の物があったら、あらかじめいくらが正当な取引価格かを知っておくことが一番大切だろう。その上で、自分の納得の行く値段で交渉する。交渉が実らなかったら、自分はその商品に縁がなかったと諦めるべきであり、決して自分の予算を吊り上げるべきではないし、購入した後でもっと安く買った人がいても悔しがるべきではない。ってことで、私はこのスカーフがとても気に入っているし、値段も大成功だと思っている。うれしー!

 妻の欲望を満たして、夫は本来の目的である蚊帳の店を目指した。

 もう一軒の蚊帳の店は、フセイン広場からまっすぐに西に走るメインロード沿いの、ハンハリーリの西端近くにあった。フセイン広場から行くとメインロードの左側にある。この辺りになると、観光客相手の土産物という感じはすっかり消えて、庶民のショッピング店街になっている。

 店の目印は、白地に青のシルクハットとステッキが書かれている看板で、基本的には布地屋さんだ。

 店に入ると何も言っていないのに「蚊帳だな」と主人に言われて、店の奥を指差された。奥のカウンターにいる青年に指示して、たちまち3種類の蚊帳が出された。一つは最初に見たのと同じ丸い輪がついているもので、あとの2つは輪がない。輪がないうちの1つは4箇所で吊るすタイプで吊るすと箱型になる。もう一つはベッドの頭の上に当たる部分に横並びに4箇所吊るし紐の付いているタイプ。いずれも値段はEGP20(約400円)だった。


モーリシャスでの使用の図。
 頭側の一辺4箇所で吊るすタイプの方が、箱型に吊るすタイプよりも幅や足までの長さがフレキシブルである。2人分のダブルベッド全体をカバーすることを考えて、一辺4箇所で吊るすタイプを購入した。エジプトの後、ケニアのビーチで、モーリシャスで、すぐにも蚊帳は大いに役に立っている。買っておいて良かった。

 本日の目標達成。ハンハリーリからアタバ市場の脇を通って宿まで歩いて戻ってきた。いやー、よく歩いた一日だった。


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