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2007.01.10
たどり着くだけで満足のメンフィス
エジプト:カイロ |
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昨日のピラミッドは良かった。今日もカイロはなかなかのお天気なので、メンフィスでも行ってみるかと気軽な気持ちで宿を出たのは9時40分だった。
我らがアモーレ塾塾長の丸山氏は、タクシーをチャーターしてメンフィス、サッカーラ、ダフシュールと一日で周ってしまうのがいいですよ。自力で行くなんて大変ですよ、と貴重な助言をしてくれていたのだが、時間もあることだし一つずつゆっくりと地元の交通機関を使って行ってみることにしたのだった。まぁ、時間もあることだしってのは一つの理由だが、もう一つの理由は、タクシーをチャーターすると高いなぁというのも大きかったのだ。
ガイドブックによれば、まず地下鉄でギザに行き、ギザ広場からサッカーラ行きのバスに乗り、サッカーラ村からミト・ラヒーナ行きのミニバスに乗って遺跡の前で降ろしてもらうらしい。ちょっとややこしいなぁ。
地下鉄のギザ駅までは文明社会が機能しているので楽勝だった。
さーて、ここからが問題だ。サッカーラ行きの大型バスはギザ広場から出ているというのだが、そのギザ広場ってのがなかなか見つからない。
地下鉄のギザ駅の改札を出て、左手に歩いて行くと大きな通りに階段で下りるところに出る。階段を下りて大通りを右手にずーっと歩いて行くと、道路にミニバスがたまっている所がある。ギザのピラミッドに行くミニバスをつかまえた所だ。しかし、ここには大型バスは停車していないので、ここはギザ広場ではないらしい。
地図を頼りに、バスがたまりそうな所を探してずっと歩いていたら、ようやく大型バスが集積しているバスターミナルっぽい所に到着した。そこら辺の小さなブースに入って座っているエジプトおっさんに、サッカーラ村に行きたいんだが、どこで何番のバスを待てばいいのかと質問しても英語が全く通じない。おおお、これは手ごわいぞ。それでも、まわりの人が助けてくれて、あるプラットフォームでバスを待つことになったのだが、バスは20分待っても30分待っても全くこない。いや、バスはこのプラットフォームを通るのだが、サッカーラには行かないというのだった。さっき聞いたおやじといい、周りで助けてくれたおやじといい、とってもあてにならない風貌だったしなぁ。
かくして私と夫は二手にわかれて、バスターミナルに入ってくるバスと入ってこないバスに、片っ端からサッカーラに行くかどうかという質問攻撃に出たのであった。
これねぇ、30分くらいやってみて、サッカーラ行きってのは、もしかして1日に2本とかそういう頻度でしか出ていないバスなんじゃないかと思い始めた。
「今日はもう失敗ということで帰ろうか」という気持ちが頭をもたげたが、せっかくここまで来てそれも悔しい。もう一度ガイドブックを読み直してみたら、サッカーラ村に直接行くのではなく、マオリテーヤ運河までミニバスで行き、そこから別のミニバスでサッカーラにいくという方法があった。
ということで、仕切りなおしで「マオリテーヤに行きますか」とミニバスに聞き始めると、ものの5秒でマオリテーヤ行きに乗ることができたのだった。そう、サッカーラに行くなら、ギザからマオリテーヤ運河を目指すべきだったのだ。マオリテーヤ運河は先日ピラミッドへ向かったのと同じ道。つまり、ギザ駅を降りて、大通りを右にいったミニバスの集積所にいれば、すぐにでもマオリテーヤ行きのバスをつかまえることができたのだった。あーあ、1時間近くもロスしてしまった。
マオリテーヤ運河に行くバスは、トヨタハイエースみたいなマイクロバスの型ともう少し大型のミニバスの型があり、料金はそれぞれEGP1とEGP0.5で、ミニバスの方が料金が安い。人を多く乗せているからだろう。20円か10円かって差だから、このためにミニバスを待つのはどうかと思うが、料金を支払う時に知っておけば便利かもしれない(こ、細かい情報ですが)。
マオリテーヤ運河は右手にピラミッド病院が見えた先の運河。あらかじめバスの助手さんに言っておけば、ちゃんと降ろしてくれる。この路線のバスはいつ乗ってもちゃんとしていた。
特にこの時の助手さんは愛想がよく、写真を一緒に撮りたいというと、わざわざバスから降りてポーズまで取ってくれた。エジプト人のこういう所は、時々とてもいとおしい。
次のバスは、運河の向こう側から左方向に走るミニバスだ。
ここから運河に沿って走る道はサッカーラ街道と呼ばれる街道で、近郊の村へのマイクロバスがたくさん停車していた。
バスはいっぱいになったら走るので、バス助手は客引きに忙しい。向こうから「どこに行きたいのか」と聞いてきてくれるので、サッカーラと答えるだけでいい。最初に見つかったサッカーラ行きのマイクロバスの助手に、値段を聞いたらEGP5(=US$0.83、2007年1月8日の換算レートUS$1=EGP6.01を使用。以下全て同じ換算レート)と言ってきた。まーたまた。そいつの手を振り払って歩き出すと、すぐにEGP1でサッカーラまで行くという正直マイクロバスが見つかったので乗車。車内は地元のエジプト人ばかり。ギュウギュウになるまで詰め込まれてやっと出発した。
ガイドブックのメンフィスの写真を見せて、ここに行きたいので乗り継ぎのマイクロバスの所で降ろしてくれというと、ちゃんと降ろして次のマイクロバスの運ちゃんまで紹介してくれた。その親切はちょっとくせ者だったなぁ。アラビア語なんで何ていっているかわからないが、サッカーラ村からメンフィスまではとても近い距離にもかかわらず、長い距離を走ってきたマオリテーヤ運河とサッカーラ村との料金と同じEGP1だったからなぁ。「ちょっとぉ、ぼったくられたんじゃないの?」と私は息巻いたが、夫の「でも20円だし・・・」という一言で冷静さを取り戻した。時々、現地通貨で現地物価で考え始めると、耳垢のような金額に我を忘れそうになるのだった。
「メンフィスへはここをまっすぐに歩いて行けばすぐだから」と道が2又にわかれた所で降ろされ、バスは左方向に去っていった。右方向に歩いて行くと、すぐにメンフィスの遺跡に到着。あらら、12時をちょっと過ぎてしまった。いやー、長い道のりだった。
きれいな大型観光バスも停車していて、それらしい雰囲気を出していた。入り口で入場料一人EGP30(=US$4.99)を支払い敷地に入った。
敷地の右手に1つの建物があり、あとは庭になっていてスフィンクスや彫刻がポツポツと置いてあるのが見えた。この建物こそ、ラメセス2世の像が横たわっている所である。今日はこれだけを見に来たわけである。
建物の2階は回廊になっていて、上から巨像を見られるようになっていた。1階にはエジプトのおっさん二人が入り口から入ってくる観光客の袖を引っ張っては、「ラメセス2世と私を写真に撮ってもいいよ」と強制バクシーシ(チップ)への道に引きずり込もうと営業をしていた。あまりの図々しさに大抵の人は、「はぁ?」と冷たい視線を投げて通り過ぎるだけだが、ハイテンションな観光客の中には、「いいわよ、いいわよ」と撮影してチップをあげる人もいた。2階から見える景色には現代のエジプトも映っているのが面白い。
建物を出ると、庭の真ん中に1912年に発見された大理石(アラバスター)製のスフィンクスがいる。
ギザに比べると顔が削れていないために、美しいし、大きすぎないので全体の形もきれいに残っている。
庭には他に、割合大きな像が一体と、メンフィスから出土されたものと思われるアラバスターや石でできた彫刻やレリーフが屋外博物館のように展示されている一角があった。
ラメセス2世を20分くらい眺めて、庭の展示物を眺めるのに15分。
そんな感じでこの敷地内の物は全て見終わってしまった。
スフィンクスを見ながら、手持ちしてきたパンをかじって昼食。ガイドブックには他にもメンフィスの遺跡があるように書いてある。それはどこでみられるのだろうか。
チケットを購入したオフィスに戻り、他に遺跡で見学できるものにはどうやって行くのでしょうかと尋ねると、「そんなものはない。ここにあるのが全てだ」ときっぱりと言われた。
えええ?メンフィスこれで終わり?
ラメセス2世は確かに大きいが、タイの涅槃像の方が大きいっちゃ大きいわけで、ふーん、これかぁ、これを見に私たちははるばるやって来たのかぁと思うと、あらためて丸山塾長の言葉が蘇ってきた。塾長の意見は的を得ていた。もし1週間などの予定でエジプトに来たとして、自力でここまで来てこれだけじゃぁ厳しい。これなら全てのピラミッドを巡るツアーに参加した方が効率がいいのは確かだと思った。
私たちがカイロに滞在している間、同じ宿に宿泊していたリーマン・パッカー(サラリーマンをしながら休暇を使って世界中をバックパックで旅行している人)のマツオさんは、ギザ、サッカーラ、ダフシュール、メンフィスを地元の交通機関を使って1日で周った人だ。エジプトは初めてにも関わらず、事前の情報収集能力と現場の嗅覚が素晴らしく鍛えられている、本物のバックパッカーなのだ。こういう人か、我々のように時間があってお金を使いたくない人でない限り、メンフィスへの自力行脚はおすすめではない。
とはいえ、メンフィスのほのぼのとした風景を楽しみながらサッカーラ村へ徒歩で戻るのはなかなか楽しかった。
カイロ市内でもロバが荷を引いている姿は見られたが、ラクダが引いているってのは見ない。運んでいる木がまたオアシスな感じで、いかにもメンフィスという趣があった。こういうのは、歩いていないとなかなか目に留まらないものだ。
サッカーラ村からはマオリテーヤ運河行きのマイクロバスに乗って運河まで戻る。
来る時とは違った道を通るのでちょっとどっきりするのだが、マオリテーヤ運河は大抵のマイクロバスの終点なので、あまり焦る必要はなかった。
一度行ってしまえば、そんなに難しくも面倒でもないメンフィス。地元の人との触れ合いも多く(良しにつけ、悪しきにつけ)、カイロとは違って空気もきれいで、のんびりとした田舎の雰囲気が楽しめる道中だった。
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