夫婦2人で世界一周の旅に出発!現地から海外長期滞在の旅の様子をお伝えします。
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2007.02.04 Vol.2
マサイ・マラ国立保護区サファリツアー第二日目(午後編)

ケニア:マサイ・マラ

 「お昼ご飯はサバンナで食べるんだよ」というマイケルの言葉に、一同はやや驚きを隠せなかった。というのも、サファリに出発する前の注意事項として、サバンナではどんな肉食獣が草原に潜んでいるとも限らないので、絶対に車を降りないようにと言われていたからだ。

 それでもマイケルの選んだ場所なら大丈夫なのだろう。広々とした草原に一本だけアカシヤが傘を広げている場所に車を停車し、そこでお昼ご飯を食べることにしたのだった。

 トイレはサバンナ。お尻にライオンが食いついてきたら、怖いというよりもとっても恥ずかしいのだが、そんな恐怖と戦いながらのトイレもサファリなら。

 何でもない野原に見えても、そこは天下のマサイ・マラ。突然ナナフシが洋服に飛びついてきたり、超ラブリーな模様の鳥の羽が普通に落ちていたりするのだ。

 私たちがお昼ご飯を楽しんでいる間にも、今日は助手がいるマイケルは、助手と二人で再度、車の点検をしていた。そうだ、ねじが一本取れたままで走っているのだった。

 問題なく走っていたし、動物の続出で私たちはすっかり忘れていたが、責任者のマイケルはかなり神経をすり減らして運転していたことだろう。そんな事はおくびにも出さないのがプロフェッショナルらしい態度だった。

 同じアカシヤの木の下で、もう一組のサファリ客が昼食を取っている。ナイロビのプラネットのオフィスで出会ったカナダ人カップルに見えた。するとマイケルが私たちに近寄ってきて、向こうのお客さんが私たちのことを日本人かどうか聞いていたと報告しにきてくれた。東洋人なので、もしかしたら日本人かもしれないというのだ。

 私と夫は好奇心からその車のカップルに近寄っていった。見ると日本人女性と白人男性のカップル。カナダから来たのだそうだ。この後の話は「People(出会った人、ケニア:マサイ・マラ)」に譲るとして、アカシアの木の下でこんな面白い出会いもあるんだなぁと、このちょっとした偶然を楽しんだ。

 午後2時半。1時間の昼食時間の後、午後の部の開始だ。走り始めて15分近く後の午後2時43分、木の上にいるレオパード(ヒョウ)を発見。

 葉の繁っていない部分に座っていて比較的近い位置なので、デジタルカメラの望遠を使うとかなり近くまで寄って撮影することができた。残念なのは、くもっていて光が足りなかったこと。あのいわゆるヒョウ柄をもっと鮮明な光の下で、青空をバックに見たかった。

 先行していた車と私たちの車で見ていると、やがてヒョウは、大きな手を前に出しながら重量感のある体でゆっくりと木の幹を伝って降りていった。それに従って、体中の模様が伸びたり縮んだりして強靭な筋肉のありかが遠くでもわかるのだった。

 草食動物は愛らしい魅力があるけれど、肉食動物はドキドキするような魅力を持っている。ライオンにしろヒョウにしろ、人間など眼中にないという動きがこちらに威圧感を与える。圧倒的な存在感だ。

 午後3時。保護区内にある高級ロッジに立ち寄る。もう一度車の調子を点検するために45分間をここで過ごしてほしいと言われた。

 エントランスからして高級感が漂うロビーには、きちんとした制服のスタッフがにこやかに対応していて、中庭に続くカフェではアウトドアとは無関係なファッションで、キチンとメイクしたりパールのネックレスなんかしちゃっている白人のご夫人が午後のお茶を飲んでいたりした。

 あれー?今までサバンナにいたと思ったのに、急にロンドン郊外の隠れ家的ホテルにでも来てしまったような雰囲気になっている。ビーチサンダルで化粧っ気なし、見るからにアウトドアな格好の我々は、相当に場違いな雰囲気を醸し出していた。

 ロビーを抜けて中庭の先には、ヒッポ・プール、つまりカバのいる池がロッジの敷地内にありカバを観察できるようになっていた。今の時期、保護区にあるカバの見られるポイントはぬかるんで行く事ができない。もし行ったとしたら、タイヤがぬかるみにはまり込んで、抜き差しならない状態になってしまうのだそうだ。というわけで、マイケルは車の点検時間を使ってここでカバを見てくれという配慮をしたのだった。

 中庭の先の湿地帯にはウッドデッキの通路がかかっていて、池の端にある東屋に続いていた。

 この池にカバがいるということだったが、私たちが到達した時、わずかに鼻先だけを出していたカバは丁度沈んでしまう所だった。

 カバは見ることができなかったが、ここに集まる高級ロッジ宿泊者を見学できたので良いとしよう。この東屋は東屋付きのウェイターが1人いて、お客様のご注文に応じてウィスキーやワインやソフトドリンクなどを出すバーにもなっていた。

 「ヒッポを見ながらだったら、やっぱりバーボンよねぇ」と私は勝手に思ったりしていた。ま、ブラジルの国旗がついた300円のビーサンではあまり似合うまい。今日の所は出直すことにした。

 ウッドデッキは右手へと続いており、下には川が流れていて、もしかしたら象が水を飲みに来るのを見られたりするのだろうかとも思った。やはり保護区内にある宿泊施設は、我々の所よりももっと動物が訪れるのだろう。それは羨ましいではないか。

 中庭では餌付けされているのだろうか、昨日から何度も撮影しようとしては飛び立ってしまって撮影できなかったスターレーンが何羽も羽を休めている。

 普通これだけ近づいたら飛ぶのにおかしいなぁ。もしかしたら羽を切られて飛べないのかもしれなかった。そうだとするとちとやり過ぎだ。

 ウッドデッキを最後まで歩くと中庭に戻ってきた。

 ここには青々としたプールがある。「はい、撮影するからそこに立って」って夫に言われても、自分がここで宿泊しているわけでもないので、恥ずかしい。でもまぁ、記念に撮影してみた。

 美しく刈り込まれた芝生の周囲にロッジが並んでいる。

 お土産物屋はナイロビ市内で私たちが宿泊している近所じゃぁ出回っていないようなハイセンスのものがたくさん。楽しくて、ついつい時間を費やしてしまった。

 で、ここまで仔細に見学すると、一体こういう高級ロッジにはおいくらで宿泊できるのかしらということが気になる。こんな格好にも関わらず、フロント嬢は丁寧に説明して、豪華パンフレットまでくれたのも好感触。宿泊だけの値段というよりも、多くの人は2泊3日のパッケージを利用してくる場合が多いのだそうだ。

 ナイロビからここまでの小型機の往復、空港までの送迎、2泊分の宿泊費、滞在中の食事とアフタヌーンティー付き、滞在中の1日2回のゲーム・サファリ付きというパッケージを利用する場合が多いのだそうだ。で、そのお値段は1人US$500。ただし、保護区への入場料、一日US$40は含まれていないのだそうだ。だから3日間の入場料を支払うとUS$620、2日間の入場ならUS$580ということになる。

 私たちは2泊3日のツアーで1人US$210支払っている。保護区への入場料は込みだ。3倍支払うとこういう感じのサファリになるのだということがわかった。このロッジの名前はWilderness Lodges。インターネット上で予約が可能だそうだ。

参考
Wilderness Lodges
サイト:http://www.discoverwilderness.com

 午後4時、マイケルが戻ってきたので出発。今度はマサイ族の村へと向かう。途中にバブーンの親子、ホロホロ鳥、テリムクドリ、スターレーン。

バブーン(ヒヒ)の親子

顔が鮮やかなブルーのホロホロ鳥。

テリムクドリは遠くてあまりきれいに撮れなかった

スターレーン。野生は伸び伸びとして見える。

 午後5時、マサイ族の村に到着。この辺りのマサイ族は観光マサイと言って、観光客の見学を受け入れている。ある程度のチップを支払うと、民族舞踊を見せてくれて、村の中を案内してくれるのだそうだ。

 車を降りると村の責任者だというかなり若いマサイ族の青年が近寄ってきた。まず最初にチップの交渉から始まった。1人KSH1000(=US$14.17、2007年2月5日の換算レートUS$1=KSH70.58を使用)と言ってくる。マイケルは1人KSH500だと言っていたので、即座にマイケルに助けを求める。するとマイケルはこれからも他の観光客をたくさん連れてきてあげるからとマサイをなだめて1人KSH500にしてくれた。勇壮なマサイ族、牛と戦うマサイ族、牛の血を主食にするマサイ族、他の文明を受け入れないマサイ族。マサイ族に関して薄っぺらい知識を持ってここまでやってきた私だが、この一発目の交渉で、案外、商売熱心なマサイ族という一項目が付け加えられた。


観光マサイはデジタルカメラの操作もお手のもんだ。
 チップというよりも支払いが済むと、写真取り放題の時間がやってくる。身近に出会うマサイ族は、体脂肪率が限りなくゼロに近い、華奢だけれど筋肉の発達した人たちだった。

 写真を撮影し終えると、私の手を取る。な、何だ、誘惑か?と思ったら、「いい時計しているねぇ。このマサイの杖と交換しないか」と誘惑された。

 むむむ。これからの旅で時計よりもマサイの杖の方が役立つ場面があるのだろうか。肩凝った時、強盗に襲われた時。

 どう考えても時計の方が役立ちそうだったのでごめんなさいとお断りすると、しとーっと時計を見ながら残念だと言われた。生のマサイはイメージのマサイと違ってとても人間臭かった。

 ひとしきり写真撮影を行った後、若いマサイ族の男性が突然にして隊を組み歌い踊り始めた。

 喉を妙な具合に使う変わった歌い方だった。

 これは恐らく求婚の歌なんじゃないかと思う。これを歌いながら一人の女性を取り囲み、その取り囲みの輪をどんどんと狭めていくというダンス。

 取り囲まれたチグサちゃんはどうしていいかわからずに下を向いてしまった。

 この後は、マサイ族十八番のマサイ飛び。若い男性が跳躍力を競い、高く飛べる男に栄誉を与えられるのだそうだ。

 跳躍する度に、マサイ族特有のヘアーが、じゃらじゃらの首飾りが一緒に飛ぶ。緑の草原を背景に真っ赤な衣装で跳躍するマサイ族は、観光客の想像するイメージのマサイ族にぴったりとくる。


 まぁ中にはあまり一生懸命飛ばない奴もいる。そういう奴に限って腕に最新のデジタル時計なんかしてたりする。「ってゆーか、もうこういう時代じゃないんだよねー」とでも言っているような。これもまた現代のマサイを見るという意味では生々しい。もっと観光に徹底するようになると、職業として一生懸命に飛ぶのだが、まだそこまでも至っていない、かといってかつての純粋に飛んでいたものとも違う、そういうマサイの現状が垣間見えた。

 男子の跳躍の後は女性陣の歌。こちらも、甲高い声で歌うのが特徴的だ。

 カンガーと呼ばれる色とりどりの布が美しい。

 男性も女性もどことなく恥ずかしがっているような気がした。恥ずかしがりや、などという問題とは違うだろう。自分達の文化が先進国から見るとかなり変わっていること、それが今日に現金収入の元になっているのだが、自分達が見世物になっているのをどこか恥ずかしいと感じているような気がした。そうではなくて、本当に貴重な伝承文化を披露しているのだと自信を持っていいと、誰かが彼らに教えてあげるべきなんだろうなぁ。少なくとも、自分が見世物になって恥ずかしいと思っている風な所にマサイ族の誇り高さを感じたのは確かだ。

 マサイ族の村は、中庭を家で囲むように出来ていて、村の真ん中には家畜を入れておく囲いがある。

 家の壁は牛糞で作られているそうで、確かに近寄るとそんな臭いがして、ハエもぶんぶんと飛んでいた。ここに住むのはちょっと辛そうだなぁ。

 何か質問は?と言われたので、「マサイ族というと耳に大きなピアスをした跡があり、耳が垂れ下がっている人が多い中、あなたの耳はなぜピアスの穴がないのか」と聞いた。すると、自分は上の学校に行ったからだと彼は答えた。上の学校に行く人間は穴を開けないのだと。インテリマサイの耳にピアスの穴はないのだ。

 村の隣の敷地は村人の手作りアクセサリー販売所になっていた。造り手ごとにブースになっていて、少しでも足を止めるや製作者が飛んできて、欲しいか欲しいかと聞いてくるので足を止めずにぐるぐると見て回った。

 ふー。以上が私のマサイ村体験である。観光マサイを作り出し、彼らをこんな風にしてしまったのは私たち、観光客の責任でもある。しかし、近代文明を受け入れないマサイと聞いていたが、しっかりと文明社会を受け入れ、それを貪欲にご飯のネタにしているのは進化だと見ることもできる。人間は進化するものだ。それに対して勝手な思い込みを持って接して、勝手に失望する方がおかしい。強引な売り込みをするマサイにかつての気高さがないと失望するのでなく、進化の過程にあるマサイに出会えたことを新鮮な体験として受け止めるべきだろう。

 これで本日のサファリは終了。キャンプ地に戻る途中、本日最後の動物、ブチハイエナを見ることができた。

 一日に2種類ものハイエナを見られるなんて、君たちは何てラッキーなんだ!と一日の終わりを祝福するようにマイケルは盛り上げた。確かに。

 マイケルのアドヴァイスは気がきいていた。今日は、別方面から来た大団体がこれから到着する。彼らが来る前に、さっさとシャワーを浴びておいた方がいいぞ。

 この夜のキャンプサイトは大賑わいだった。チェコ人、カナダ人、日本人が押し寄せ、昨日は私たちだけだったのに食堂では席が足りなくなるほどだったのだ。チェコ人は男性ばかりのグループで、途中から運んできた自転車でサイクリングも行うのだと言っていた。このグループでは、最初に動物を見た人が、その晩のビールを奢ることになっていて、今日最初にライオンを見た日本人の奥さんを持つという男性が皆にビールを奢っていた。とにかく陽気。外国で出会うチェコ人は常に陽気だというイメージがある。資本主義になって成功して海外旅行を楽しんでいる、そういう人が多いからなのだろうか。聞いてみると、日本人の奥さんを持つというチェコ人の男性も、資本主義になってから会社を一つ作り、それはオランダの企業に売り払い、今はそのお金を元に買った不動産の賃貸収入で生活しているのだそうだ。大成功。陽気なわけだ。

 彼らの陽気さにあやかって、私たちも隣でビールを飲み、今日のサファリを思い出しては楽しんだ。


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