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2008.02.17 Vol.1
半島トレッキングでかなり気分上昇〜前半
ニュージーランド:カイコウラ |
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イルカと泳ぐプランもロブスターを食する夢も消えた今、カイコウラに残された楽しみは何かとガイドブックを見ると、ウォーキングWalkingという項目がある。
ロンリープラネットでは3つのウォーキングコースが紹介されていて
・半島を巡るウォーキング
・内陸のフィッフェ山Mt.Fyffe(1602m)への登山
・コーストラインを歩く3日間のウォーキング
私たちはこの中で最も気軽に行けそうな半島のトレッキングを行うことにした。
町中から車でも行けるシール・コロニー(あざらし群生地)を目指し、そこから2時間半かけて半島の先っちょを歩いて半島の反対側に行って、最後は半島を横切って町中に戻ってくるというコース。宿の人の話では、全行程5時間くらいで行けるということで、1日かけて歩くには丁度いい。
昨日とは打って変わって青空が広がっていることもあり、俄然やる気が出てきた。とはいえ、お昼ご飯用のお弁当の準備を何もしていないので、とにかく町で何かを調達すべく、朝8時半過ぎに宿を出たのだった。
宿を出るなり目に飛び込んで来たのは、道のずっと向こうに雪を被った。フィッフェ山かなぁ。
昨日は曇っていて全く見えなかった。晴れて景色が変わると町の印象が全然違って見えてくる。
海沿いに行くと、さえぎる物がなくなって山がますますクッキリと見える。カイコウラは海辺に砂利を積んで護岸してるのだが、護岸の内側に川のように水を通している部分がある。
この川のような部分は波がないために、鏡面になって山を映し出してそれは美しい風景を作り出していた。こういう水面に山が映し出されるという景色は何もここに限ったことではないが、映し出されている水辺が海のすぐそばだということ。つまり海抜0メートルに雪を関した山が映し出されるという状況はとても珍しいんじゃないだろうか。
海と雪山を一度に視野に入れられる。国土が南北に細く内陸に至るに急に隆起しているニュージーランドという国の特徴を、このカイコウラで見ることができたのは良かった。そういう意味で、朝から昨日の鬱々とした気持ちは吹っ飛んだのだった。自分の単純さにあきれ返るほど、ウキウキした気分になってきた。
で、お弁当の準備。昨日見つけておいた肉屋でハムでも買おうと思っていたのに、今日は日曜日でお休み。近くのスーパーでパンとハムとレタスとチーズを買って、これをお昼ご飯に持っていくことにした。
因みに肉屋にかかっていた札には月曜日から土曜日までの開店時間が書かれていて、日曜日の欄には「教会、ゴルフ、スカッシュ、映画」と書かれている。なかなかウィットがあって可愛らしいなぁ。
この後、ネットカフェに立ち寄ってメールチェックや次のバスの予約と宿の予約をしていたら、あっという間に11時近くになってしまった。おお、そろそろ出かけなくては。
ということでもう一度宿に戻って、あらためてトレッキング開始。11時半出発だ。海沿いの道に出て左手の町方向ではなく右手に向かって歩いて行く。
晴れてみれば、カイコウラの海の色はとても美しい。この海を見ながら先に見えている半島をグルーッと歩くのだ。
ぶらぶらと歩く道沿いには巨木を彫刻した大胆なオブジェが突如置いてあったり、ベンチで老人が寛いでいたり、日曜日とあってお父さんと息子が浜辺で遊んでいたりした。
半島まではまっすぐな道が続くだけではなく、途中に小さな岬というかちょっと突き出たような場所がいくつかある。
そうした場所は、ごつごつした白っぽい岩が美しい水面から突き出していて、水面の下にもその岩が透けて見える。目を遠くに移すと徐々に雲に隠れてきているが、まだ雪山が見えている。そういう風景だ。
その小さな突き出しの1つの先にプレハブの建物があり、ボードウォークで桟橋になっている場所があった。実はこのプレハブの建物が魚屋さんだったのだ。
嗚呼。
昨日知っていれば、ここで鮮魚が手に入ったのに私たちは全く逆方向に歩いていってしまっていた。しかも今日は日曜日で開いていない。残念。
やがて大きく道路が右に曲がって行く場所の右手に、ちょっとした丘が2つ並ぶ場所にやってきた。
丘の上から何か白い玉がポロポロと転がっているように見えるので近寄ってみると、急な斜面を下っている羊たちだった。最初の1歩はおっかなびっくりなのでゆっくりと踏み出すが、後は勢いづいてスピードが上がるので、ポロポロと落ちていくように見えたのだが。
この先にも羊を飼っているB&Bがあって、「毛刈り体験をしながらゆっくりとカイコウラで過ごしませんか?」というようなキャッチコピーが書かれていた。羊はちょっとだけ人間を意識したが、すぐに草に興味がいってしまったらしい。とても無関心に私たちに向けたお尻が結構可愛い。
こんな海沿いなのに気軽に羊がいるっていうのがまたニュージーランドなんだなぁ。
再び目指す半島が見えてきて、足元には美しい海の下に白い岩棚が透けて見える場所に、洒落た屋台が出ていた。
ここでは茹でたロブスター、ムール貝、ホタテ、魚などを調理して野菜とご飯を付けて出してくれる。屋台といっても今流行りの真っ白な大きくて四角い陶器のお皿に盛り付けた様は、洒落たカフェ飯といった感じ。
歩いて来ている人なんて私たち以外には誰もいなくて、みんなドライブの途中で立ち寄っている人ばかり。ワインやビールを傾けながら美しい海と、まだ見えている雪山を眺めてご機嫌な雰囲気だ。手持ちのサンドイッチもあったが、私たちもついつい誘惑に負けて2品ほど注文して食べた。(料理については「本日の献立2008年2月17日昼」参照)
ここから5分も歩くと、半島の左側の付け根に到着する。シールコロニー(アザラシの群生地)と書かれた看板があり、ここは観光バスも来るようで広い駐車場になっていた。駐車場の先の海辺に大勢の人がいて、指差す先の岩に本当にアザラシが日向ぼっこしている。
アフリカのサファリだってサファリカーに乗るし、南米のペンギンコロニーだって入場料金を支払ったし、何か野生の動物を見るのには入場料なり車代なりが必要だという感覚だったのに、何の入場料金も支払わず、こうした風景が散歩の途中で見られるなんて!私は何よりもそのことにちょっと感動した。
もっともこのコロニーは大きな1つの岩でしかなく、集まったあざらしもこの時は7頭だったので大仰に入場料を取れるという場所ではないが、それだけに身近い自然に親しめる感じがあって良かった。
あざらしは体を乾かしたいのか、グッと胸を張ったような姿勢で動かないのもいれば、芋虫のように寝ながらゼンドウ運動して前に進んでいくものもあり、海中に巨大な昆布のように波にメラメラと乗って流れるものがあれば、それもアザラシだったりして、なかなか見飽きない。
トレッキングコースは、ここからシールコロニーの裏手のスロープを登って一気に高台に向かった。
高台にのぼる前に現在地のコミカルな案内図があった。私たちはこの地図の下の辺を右手からずっと左に向かって歩いて、今はPのマークの駐車場にいる。ここから高台に上がって反時計周りに半島の上部を左から右に進む予定だ。
高台は展望ポイントになっていて、下まで車で来た人もここに上がって景色を楽しむことになっているようで多くの人がいた。左手には歩いて来た半島のクネクネした道が一望でき、右手の眼下には海の下に透けて見えるひだの様な岩棚がある。
岩棚で浅くなっているために白波が起きて、岩の上でエメラルドグリーンに見える水の色と白波と奥の濃いコバルトブルーの組み合わせが非常に美しい景色が楽しめた。
高台には航空写真が掲示されてよりリアルに自分のいる位置がわかるようになっていた。自分たちの立っている高台の部分だけグッと高く隆起しているのだが、その周辺は海面よりも少し下がった岩棚になっている。なぜ、半島の部分だけ突然高くなっているのか。とても不思議な地形だった。
それにしても、これを見るとまだまだ先は長い。時刻は既に2時。あれれ?ちょっと出発が遅すぎたかしら?
しかし、この高台からの風景を見て、この先のジグザグとした海岸線の地図を見せられると、この先の景色にも興味が沸いてきて、引き返すわけには行かなくなった。
岬を回りこんで振り返ると、緑の草原の向こうに碧い海、その向こうに浮かぶように雲に隠れた雪山が見えた。これも、なかなか幻想的な風景。
目の前の道は、これまたニュージーランドらしい芝生の道で左手は私有地なのか垣根のある牧草地帯で、遠くに羊が草を食んでいるのが見え、左手にはさっき地図で確認した断崖絶壁と、その下に海に隠れる白い岩棚が出たり引っ込んだりする風景が見渡せた。
今日のトレッキングは本当に面白い景色に出会える。
やがて、この崖の下に小さな人影が見えた。その男性は海辺でしゃがみこんで、どうやら熱心に何かを撮影しているらしい。
このシチュエーションで何かを熱心に撮影しているとしたら、それはアザラシに違いない。そう、ピンときて私たちは崖の下に行ける道を探しながら歩くことにした。
男性が写真を撮っている浜辺から岬を一つ越えた場所は白い浜辺と浅瀬がエメラルドグリーンになっている美しい小さな湾があった。
この湾の終点となる次の岬はちょっとした展望台になっていてBird Cityと名づけられているのだが、ここから下に降りる道が見つかった。
坂はかなり急だし、ここを降りたらかならず登って戻ってこなければならないということで、この展望台にいる人で下に降りようとする人はあまりいないのだが、私たちはどうしてもさっきの男性が撮影していた場所に行ってみたかったので、ずんずんと坂を下って下まで降りていったのだった。
下に降りると突き出した小さな半島の付け根に白い硬い砂山があったので登ってみる。
目線が高くなって、今まで通ってきた岬が全て見渡せた。
この岩山、簡単にくぼみがあって足をかけながら登ってきたのはいいが、降りるのがちょっと怖い。実はかなり急な斜面だったので途中は後ろ向きに降りて、中腹から下は前向きに降りるりることができるといった感じ。
こんな風に好きなように存在する岩山を登ったり恐々と降りてきたりするなんて、子供時代に戻ったような気分がして、目に映る景色も素晴らしいし気分はこの上なく爽快だった。
ここから左手に歩いていき、美しいエメラルドグリーンの湾から次の岬の下を越えると、さっき見た男性のいる浜辺に出る。
すると私たちと同じように興味を持って降りてきている先客の集まる先に、いたいた。アザラシが数頭昼寝をしている。実はここもアザラシコロニーだったのだ。
→後半に続く
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