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2006.02.10
イグアスの滝〜ブラジル側 |
アルゼンチン:プエルト・イグアス |
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昨日のアルゼンチン側の興奮も冷めやらぬ今日、お天気がいいので引き続きブラジル側への見学に行くことにした。
ブラジル側に対する評価は人によって様々ではあるが、おしなべてアルゼンチン側の人気に比べると低めのトーンで語られることが多い。いわく、「アルゼンチン側も良かったけどブラジル側も気に入った」とか「やはり両方行った方がいいと思うよ」とか、必ずアルゼンチン側が優先で、ブラジルも悪くないという表現が多かった。人によっては、ばっさりとブラジル側は切り捨てて、アルゼンチン側しか行かない場合もある。
アルゼンチン側の観光案内所に行くと、アルゼンチン側とブラジル側の見物コースが掲載された地図をくれて、「アルゼンチン側には8時間費やすことになるでしょう。ブラジル側は3時間もみれば大丈夫です」という説明だった。「え?3時間で終わっちゃうんですか?」と聞くと、別にアルゼンチンをえこひいきしているわけではなくって、実際そうなんだから仕方ないじゃないかというように、係りの人は肩をすくめてみせた。確かに地図で見てもブラジル側の遊歩道の短さは明らかである。これで、同じくらいの入場料金だというのだから、人によっては行かないのもうなずける。
でもまぁねぇ。イグアスの滝なんてそうそう来られるもんじゃないし、とりあえず行ってみようじゃないの、ってことで私たちはブラジル側も見ようと思っていた。
アルゼンチンのイミグレ。
ここではアルゼンチン人も含めて全乗客が下車し
パスポートや身分証明で確認を受ける。 |
アルゼンチン側に行くのと同じようにパン屋さんによって、今日は焼きたてのエンパナーダを4つ、お昼ご飯用に買った。ほかほか、というよりも熱々で、今食べたらどんなにおいしいだろう、という香りを放っていた。水も持参している。
プエルト・イグアス(アルゼンチン側)のバスターミナルからは、フォス・ド・イグアス(ブラジル側)行きのバスが30分に2本くらい出ている。国境を越えるものの、バス内で料金を支払って市バス感覚で乗れる。市バスとちょっと違うのは、まずアルゼンチン側のイミグレに立ち寄って、一度パスポートにアルゼンチン出国のスタンプを押してもらわなくてはいけないことだ。今回の旅でアルゼンチンを出たのは一体何回目のことだろう。パスポートのページはアルゼンチンの入出国だらけになりつつある。
ここから少しいくとブラジル側のイミグレに到着。ここでも一旦全員が降りるのだが、自己申告しない限りパスポートチェックも何もない。たぶん消毒液が染みこませてあるスポンジを踏んでバスに戻るだけ。逆に正式にブラジルに入国したい人は、ここで入国手続きを行うために、乗ってきたバスには通常おいていかれ、次のバスに乗ることになっている。
この3人組の陽気な若者が次のバスをつかまえて
くれた。 |
こうしてブラジルに入国してすぐに大きなロータリーで、自分が来た道と前方が左右にわかれたT字路のような所にでる。バスに乗る時に「カタラタスCataratas(滝)に行きたいのだ」と告げておいたので、運転手さんがここで降りろと指示してくれた。で?その先、どこで滝行きバスをつかまえればいいのか?私たちには知らされていなかったが、スペイン語圏で同じく滝に行く人達が降りて、彼らにくっついていくことにした。自分が来た方向から見て右手の道に歩いていく。歩いていくのと同じ方向へ行く「Cataratasカタラタス行き」と表示されたバスが来たら、手をあげれば停まってくれる。バス停でもない所だが大丈夫だった。ちょっとマニアックな行き方なのだが、フォス・ド・イグアス行きに乗って終点のローカルバスターミナルまで行き、そこからカタラタス行きに乗り換えるよりも20分くらいの時間短縮になるのだ。帰りは、我々が来た方向から見て左手の道路でプエルト・イグアス行きのバスをつかまえて乗り込んできた外国人旅行者がいた。
この辺りだとまだスペイン語も通じるし、話してくれるし、アルゼンチンペソも使える。
バスの前から4分の1くらいの所にバーがあって、車掌さんが座っており、そこで料金を支払うと、通常は車掌さんが足で止めている回るバーを押して中に入ることができる。
アルゼンチンでは見たことの無いスタイルだったので、やはり違う国に入ってきたなぁという思いがした。それにしても随分とガッチリとしたシステムである。ブラジルではそんなに無賃乗車が多いのだろうか。治安が悪い国とも聞いているので、その点でも気になるバスだった。
プエルト・イグアスからイミグレ手続きを経てバス乗り換え地点まで40分、バスに乗り換えてから20分でブラジル側のイグアスの滝の公園に到着した。そうそう、乗り換えたバスの中で「よう!よく会うねぇ」と声をかけてきてくれたのは、これで5回目の遭遇となる大谷さんだった(大谷さんについては「出会った人」アルゼンチンを参照)。
バスを降りて入場チケットを購入。ここではブラジルヘアル、アルゼンチンペソ、米ドルの3種類の通過で支払うことができる。ヘアルを持っていない我々はアルゼンチンペソで支払い、現在フォス・ド・イグアスに滞在してヘアル生活をしている大谷さんはヘアルで支払うことになった。ところで、列に並んでいる途中で、大谷さんが「60歳以上のペアは割り引きあります」という意味らしい表示を発見。「ふーん、でもなぁ、ペアって書いてあるもんなぁ」と興味津々である。「じゃぁ、前に立っている年配の男性とペアってことで相談したらどうですか?」と提案すると、「男どうしじゃぁ、いくらなんでもまずいでしょう」。ふーむ。「じゃぁ、私と組んでみますか?」ということで、大谷さんと私でにわかペアになり、窓口に挑んだ。窓口で大谷さんは、係員の目を見て「アイ、アム、シニア」とゆっくりと説明した。係員は「OK、OK」とニッコリと笑って発券してくれたので、てっきり大成功かと思ったら、何の割引もされていなかった。「なぁ〜んだ、何の割引もされてないや」と大谷さんは、あまり残念そうでもなく言った。こういう所が大谷さんは面白い。何かあったらちょっとやってみようという所のある人である。
さて、入場券を購入したらバスで移動する。こちらのバスも入場料金に含まれているので無料である。
一度降りる停車場を間違えてもう一度乗り換えて、徒歩見学コースの始まりの停車場で降りた。左手にピンク色の大きなホテルがあるのが目印である。
遊歩道は停車場と同じ側にある道を下っていくように続いていた。下まで降りると、ちょっとした広場のようになっていて、そこから散策コースが左側にのびていた。この地点からもう滝が見えている。
しばらく歩いて行くと、丁度サン・マルティン島の船着場が正面に見えるポイントに来る。ここからはサン・マルティン滝とその右に並んでいる滝が見渡せた。
この風景を写真におさめようと夫がカメラを構えた瞬間だった。夫の左手にさげたエンパナーダの袋にアナグマが鋭い爪を伸ばしてひっかけ、あっという間に袋を引きちぎって中身をかっさらっていってしまったのだった。「あああ、私たちのエンパナーダがぁぁぁ」。ここに来るまでのバスの中で「環境保護のために動物にはくれぐれも餌をやらないでください」というアナウンスがあった。私が楽しみにしているエンパナーダをあげるわけないじゃーん、と思っていたのに、こんな形でかっさらわれるとは。時々香りをかいでは楽しみにしていたエンパナーダだったのにぃ。こんなことなら夫に反対されても、熱々のうちにバスの中で1つ食べておくのだった。
「俺はやってやるぜ!」
やる気に満ちた視線だ。 |
そういえば、やたらに鼻をクンクンさせて近寄っていたアナグマを、「可愛い、鼻が利くんだねぇ」と感心して写真を撮っている時に、もっと注意をするべきだった。「あとは楊枝があればいいのに」とでも言いたげなアナグマの満足そうな顔を見ると自分が情けなくなってきたので、あまり悔しがるのはやめた。
気を取り直して見学を続行する。次の見所はアルゼンチン側からは見えなかったSalto
Rivadaviaとアルゼンチン側ではその中の1つの滝壷に突っ込んで遊ばせてもらったSalto
Dos Mosqueterosと隣のSalt Tres Mosqueterosである。こうして見るとここもそれなりに迫力のある滝だった。後のSalto
Rivadaviaからの水量が5本の滝に絞り込まれるので、各々の水量が激しく増えているのだ。
ここから左に目を移すと、悪魔の喉笛もそろそろ見えてきた。
相変わらず高く天へとしぶきが煙のように上がっていて、今日も悪魔の喉笛は絶好調のようだった。
遊歩道はしばらく行くと、右に大きく曲がって、滝により近くなっている。ここがブラジル側のハイライトの展望台である。
展望台は途中から滝の段になった水の上に橋脚が立てられ、先端の部分は、まさに崖っぷちになる。
近づくに従って、サワサワと霧がまとわり付くようになってきて、轟々という水音が増してきた。
そして展望台の先端からは、この風景が見えた。もうもうと水煙を上げる悪魔の喉笛に向って立つと、足元に向って滝が流れてくるような気がする。右手には、自分のいる橋のある池へと落ちる滝が見え、そこからの音響が凄い。滝の水は、足元を渦巻きながら、更に下の段へと滝になって落ち、悪魔の喉笛から来た川に合流する。そして左手には、今まで遊歩道から見てきた一連の滝が見えて、全てが川に合流して、激しい流れを作り出している。右を見ても、左を見ても、滝、滝、滝のオンパレード。そしてこの音。
ここでは、霧のような水しぶきが舞っている状態だが、それは風によって強くなったり弱くなったりしていた。風が弱い時には、防水なしのカメラでなくても大丈夫だったが、風が強くなるとカメラにダメージを与えそうで防水のみに切り替えて使っていた。
このハイライトの展望台の後は、上の写真の左端に見えているタワーにエレベーターで上がっていく。
ここになると、もう悪魔の喉笛は見えないのだが、タワーの真横の滝を目前にできるのと、エレベーターで上がって、上の視点から眺めることができる。悪魔の喉笛と比べると規模が小さく見えるタワー横の滝でさえ、目の前で見ると、かなりの水量をもった驚異的な力を感じた。この規模だけでも、観光名所としている所が世界中にあるだろう。こんなのやこれ以上の滝がいくつも合体しているのが、イグアスの滝なのだ。そう思って見ると、殊更に全体の迫力を想像できる。
エレベーターを上がった所からは、滝の落ち口が見えた。
アルゼンチン側はサン・マルティン滝の落ち口を見学することができるが、こちらの滝の落ち口は悪魔の喉笛により近い所のためか、アルゼンチン側よりも水量が豊富で、流れも急に見えて、より迫力ある光景だった。
また上からは、先ほどの崖っぷちにある展望台が見下ろせる。ひえー、本当に崖っぷちじゃないかと、あんな所に行っていたのかと、冷や汗が垂れる一瞬を味わえる所。
このエレベーターを上がりきったところで見学は終了。そこから歩いて3分くらいの所にバスターミナルがあり、園内バスで入り口まで帰ることになっている。
アルゼンチン側とブラジル側は、それぞれに異なる面白さがあった。こうしてあらためて写真を見てみると、ブラジル側の方がフォトジェニックな写真が多い。「滝を体感できる」アルゼンチン側、「写真と滝の音響が楽しめる」ブラジル側ということになる。
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