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2006.11.28
ワディ・ラム砂漠ツアー(午前編)
ヨルダン:ワディ・ラム |
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この宿に到着した初日に、宿の奥さんにワディ・ラムへのツアーの事を尋ねると、最低4人集まらないとツアーは行わないのでもう2人の参加者が必要だと言っていた。
この宿のツアーは一泊二日で一人JD25、ワディ・ムーサからワディ・ラムへの往復が一人JD6かかるので、合計JD31(=US$43.66)だ。同様のツアーがないのか、ペトラ遺跡の近くの中高級ホテルが並ぶ中にある旅行代理店を訪ねてみた。
すると、そういうツアーというのは特に存在しないが、お客様のために個人ツアーを組むことは可能だという話だった。恐る恐る金額を聞いてみると、二人でUS$190だと言われた。4WDの最新の車をチャーターして、ここから出発し見所を周ってベドウィンのテントに宿泊。その晩の夕食と翌日の朝食が付き、翌日こちらに戻ってくるという内容だった。むむむ。ここからワディ・ラムまでの交通がついているかいないかだけで、他の内容は同じなのにこんなに値段が違うとは。あはははと苦笑いしながら後ずさっていく私たちに「では、おいくらなら?」と聞かれても、まさか半分の金額をいうわけにはいかない。考えておきますと早々に引き上げた。
宿のワディ・ラムのツアー予約は出発前日の夜に行う。その時までに人が集まっていなかったら行けないなぁと思いつつ、ペトラを2日観光した夜、宿のスタッフに「明日ワディ・ラムに行きたいのだが」と告げるてみた。
すると、私たち二人しか希望者がいないにもかかわらずノー・プロブレムだと言う。やがて今まで見たことのない年配の男性が現れ、どうやら彼がワディ・ラムへのツアーの手配を行っているようで、手配先のベドウィンに電話をかけ始めた。
電話先のベドウィンはジダンという男性だそうで、彼は私たち2人でも受け入れてくれるということになり、ツアーが成立。やれやれと胸をなでおろしたのだった。ツアー代金は、私たちより前に8人のグループが行った時は一人JD20(=US$28.17)だったそうだが、私たちはJD25(=US$35.21)と言われた。二人しか参加しないので、これは仕方ない。
ツアーにはワディ・ムーサからワディ・ラムのベドウィン村までの交通費は含まれていない。片道JD3だと聞いていた。出発は朝6時。宿の近くまでバスが迎えに来てくれたので、早速バスに乗り込んだのだが・・・。ここからバス内でのやり取りは「移動の記録(ワディー・ムーサからワディー・ラム)」に記述するとして、初日に女主人が最低4人集まらないと催行しないといっていたのは、お客さんの事を考えてのことだったのだとわかった。他のスタッフはそこまで気が回っていない。そこら辺が安宿の悲しさ。
とにかくバスは一件落着して走り出し、ベドウィンの村に到着したのが8時8分だった。ここでジダン氏とご対面。
長身で甘いマスクのジダン氏は、優雅な物腰で私たちを迎えてくれて、ベドウィン風の待合所で待っていてほしいと離れに案内してくれた。
ここでワディ・ラムツアーにでかけた人からの写真集などを見ながら期待感を高めたり、若い頃のジダン氏の写真を見たりしながら時間をつぶしていた。
やがてジダン氏に呼ばれたので彼のオフィスに行ってみると、イタリアのお客さんからのメールの返信をコンピュータに入力してほしいという。
代理店の人かもしれないが、その文面には2007年の1月1日にベドウィンテントに20名が宿泊する件をよろしくお願いしますと書かれていた。ジダン氏の回答はもちろん「喜んで」という内容。
インターネットの時代になって世界中のあらゆる所から直にジダン氏まで連絡が取れるようになっているのを見せてもらえた。
ジダン氏のいるベドウィン村までのアクセスなどの相談にも乗るという内容を返信メールに含めていたので、日本人でも直接ジダン氏に連絡を取って行くことができるだろう。余計な中間のやり取りを省けるので、便利なのではないだろうか。お手伝いしたお陰で、こんな情報を入手することができた。
9時半になり、いよいよ出発。ジダン氏が案内してくれるのかと思ったら夕方までのツアーには甥っ子が連れて行ってくれるらしい。ジダン氏とは夜テントで再会するということで、一旦お別れした。
28年くらい載っているというトヨタの4WDはフロントの計器類は既にメタメタに壊れているが、それでも走っている。US$190のツアーに参加すると、この車が新品ピッカピカの車だったりするんだろうねぇ。まぁ、走るという機能に変わりはない。
ベドウィン村を出るとすぐに辺りの風景は砂漠の景色に変わっていった。10分もしないうちに、最初の見所である「ロレンスの泉」に到着。
ここは映画「アラビアのロレンス」の撮影で使われたことからこのように呼ばれているらしいが、岩山から染み出した岩清水を貯めてラクダや羊に飲ませるようにしてある。近くの大きな岩には岩絵が残っているのもあり、それも見所だそうだ。
「ロレンスの泉」全体の風景
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泉の右手に広がる渓谷
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渓谷の入り口に立ちふさがる大きな岩。 |
大きな岩に描かれいてる岩絵。 |
ここから更に奥へ車は走って行った。
ワディ・ラムは砂ばかりの砂漠ではなくて、砂が踏み固められたように硬くなった平地に突然隆起したように巨大な岩がぼこぼこと並んでいて、その岩のふもとに吹き寄せられた砂が所々で砂山を作っている風景が見られる場所だった。
4WDは林立する巨大岩山の間を抜けるように走っていく。
どこか見所に達して、「ほほーこれがワディ・ラムの見所かぁ」と感心するタイプの楽しみ方ではなく、この風景の中に入り込んで何もかもを5感で感じながらドライブするのが最大の楽しみと言える。
運転好きの人ならば、是非自分で運転してみたい所だろう。
車はやがて赤い砂山の前で停車。いわゆる私たちが砂漠と聞いてイメージするものが目の前にあった。
赤い砂山で人が足を踏み入れていない所には、美しい風紋ができていた。足を入れるとサラサラーっと風紋が崩れていく。
早速登ろうとすると、細かい砂の中にずぶずぶと足がめり込んでいき、かなり登りにくい。私は靴に砂が入るのも嫌なので途中で断念したが、夫はこの砂山の登頂に成功。
砂山の上からは私はとても小さく見えるし、砂山から見ても更に正面の岩山は大きい。こんなサイズの岩山があちらにも、こちらにも、ドーン、ドーンとそびえているのだった。
この砂山の後の見所として、岩絵のある場所に一箇所停車し、他は私たちがここぞと思う風景の所で度々車を停めてもらいながら「ロレンスの家」まで到着。
ツアーといっても参加者が自分達しかいないのだから実際はプライベートツアー。好きな所で車を停めてもらえるのでとても贅沢な気分になれた。
ここも映画の撮影に使われた所だそうだ。「アラビアのロレンス」ねぇ。確か高校時代に体育館に全校生徒が集められてこの映画の鑑賞会を行ったんだけど、何一つ覚えていないのが悲しい。だから「ロレンスの家」と言われても今ひとつ感動がないのだが、周囲の風景は面白い。
「ロレンス」の家の裏手に比較的登りやすい大きな岩山がある。
この上からの眺めも目線が変わって面白かった。
午前11時過ぎ、ドライブが始まって1時間半強だ。甥っ子は自動車の走りやすい硬いメインロードをはずれて、砂の中へと車を進ませた。今までと違って普通の速度ではなかなか走れない。4WDの威力発揮だ。それでも、時々砂に足を取られそうになるとバックして別の道に進む。甥っ子はどうやら、どこか目的地に向かっているようだった。やがて背後に再び魅力的な景色が見えてきた。車を停めて欲しいというと、もうすぐこの景色が存分に楽しめる所に停車するので待ってくれという。
すぐにも、今度は白っぽい小さな砂丘を登り始め、やがてそこで停車。どうやらここでお昼ご飯を食べるようだ。甥っ子は炭で真っ黒になったやかんに水とお茶の葉と驚くほど大量の砂糖を注ぎ込んで、燃え尽きた焚き火の上に置いた。燃え尽きてから置く、って所がプロっぽい。
ちゃんとお湯は沸くんですねぇ。皆で焚き火の周りでお茶を飲みながらランチにすることにした。ランチは各自持参ということになっている。私たちの貧しいランチに同情したのか、甥っ子はハムを恵んでくれた。お返しにチーズを。(本日の献立「2006年11月28日昼」の写真をクリックすると詳細)あまり英語は通じないのでたいした会話も成立しないが、それでも、こんな誰もいない砂漠の中で私たち3人、しかもベドウィンと日本人で飯を食っているというのが愉快。
しかも目の前の風景は、ここは本当に地球なのか?と疑いたくなるような世界。延々と白っぽかったり赤っぽい砂地が続き、所々に岩山がもっこりと突き出している。その岩山は溶岩が流れて作られたように、ドロッと堆積した丸みを持つ平べったい岩の積み重ねで階段状になって見える。枯れているような生きているような草も生えていて、生命力を感じないわけではないが、荒涼として生きていくのが難しそうな土地。
地球を感じさせない風景はボリビアのウユニ塩湖以来だ。世の中には本当に不思議な光景が存在するのだ。
お昼ご飯を食べ終わると1時間の自由時間。甥っ子は砂地の上にゴロリと横になり、どこなりと好きな所に行っていいけど、岩に登るのだけはやめてくれといった。こんな所で落下して怪我でもされたら大変だからね。
1時間だったら、あの岩くらいまで歩けるかねぇと向かった岩は案外遠く、近寄ってみるとなかなか大きな岩だった。
ここでは何もかもこんな感じだ。距離感とボリューム感が麻痺する。遠くにあるのに近くに見え、巨大なのに小さく見える。
砂漠に照らされた太陽の光の照り返しがかなり強く、逆行気味に撮影した写真は物凄く白んで撮影されていた。現地にいるとそんなに強い光に感じないのだが、カメラは正確だ。
この岩まで行って帰ってくると、丁度待ち合わせの時間となった。ドライバー兼ガイドの甥っ子はピクリともせずに砂の上に寝ている。砂漠の民、ベドウィン。砂漠での昼寝が絵になる。
「時間だぞー!」とパンクチュアルな客はドライバーを起こして、午後の部を促す。午後からの見所は2箇所。その後はテントで夕食まで休憩だ。
(続く→)
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